2007年08月24日
伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」(新潮文庫)
しばらく前から友人に勧められて、伊坂幸太郎の本を何冊か読んできたが、「オーデュボンの祈り」を読んで、圧倒された。これは実質的な出世作らしいのだが、その後、様々な賞を受けた他の作品より、格段に優れている。
おそらくその理由は、支倉常長の渡欧という歴史的事実を踏まえた百年単位の時間的な流れと、かつては空を真っ黒に覆って群れなしていたアメリカ旅行ハトの絶滅という出来事とを、小さな島の中に閉じこめた、その力業の見事さにある。この途方もなく大きな時間と空間を、島の不思議な住人や喋る案山子の優午がしっかりと支えている。
この本は、一応ミステリーということになっているが、もっと大きな枠組みでかかれて良かったのだと思う。読後の感想は、大江健三郎の「万延元年のフットボール」に近い。
おそらくその理由は、支倉常長の渡欧という歴史的事実を踏まえた百年単位の時間的な流れと、かつては空を真っ黒に覆って群れなしていたアメリカ旅行ハトの絶滅という出来事とを、小さな島の中に閉じこめた、その力業の見事さにある。この途方もなく大きな時間と空間を、島の不思議な住人や喋る案山子の優午がしっかりと支えている。
この本は、一応ミステリーということになっているが、もっと大きな枠組みでかかれて良かったのだと思う。読後の感想は、大江健三郎の「万延元年のフットボール」に近い。