2009年07月16日

全要研集会第1分科会から−13

 では、こうした社会啓発の活動は、どのようにして進めたら良いのでしょうか。もちろん社会啓発はボランティア活動によっても進めることができます。しかし、やはり何らかの制度がないと広く普及することは難しいでしょう。社会啓発の活動をしようとすればそれなりに費用が掛かります。継続的に実施することも大切でしょう。そうすると、何か社会啓発の活動を支える制度が必要になります。聞こえない人、聞こえにくい人への理解を広げていくような啓発活動を継続的に実施していくためには、その根拠というか、よりどころを、どの制度に求めたら良いのでしょうか。



 現在、障害者施策は「障害者自立支援法」に集約されています。身体障害者基本法とか、要約筆記を含む手話通訳事業を第二種社会福祉事業に位置づけた社会福祉法など、様々な法律がありますが、それらを集約した形で、自立支援法があります。そこで、この障害者自立支援法の仕組みを検討してみましょう。
 そうすると、この自立支援法の中には、要約筆記関連して、「要約筆記者の派遣」と「要約筆記奉仕員の養成」という二つの仕組みがあることが分かります。これらは法律の中に直接書いてある訳ではありませんが、障害者自立支援法の中で、これらの仕組みが用意されています。
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 まず大きな枠組みから説明すると、障害者自立支援法の第77条には、コミュニケーション支援を目的として手話通訳(要約筆記を含む)者等を派遣すると書いてあります。第77条の第2項になりますが、もう少し詳しく言うと、「意思疎通を図ることに支障がある障害者等その他の日常生活を営むのに支障がある障害者等につき、手話通訳等(手話その他厚生労働省令で定める方法により当該障害者等とその他の者の意思疎通を仲介することをいう。)を行う者の派遣」を行なうと書いてあります。なぜこうした意思疎通の中間、つまりコミュニケーション支援が自立支援法の中に規定されているかというと、コミュニケーション支援がきちんと果たされれば、聴覚障害者の自立が可能となる条件の一つが整うと考えられているからです。いろいろな支援があるでしょうけれど、その中で、コミュニケーションを支援すれば、要するに通訳をきちんと派遣できれば、通訳を利用して聴覚障害者は、人と交渉し、話を聞き、学習し、働いていける、そういう考え方があるわけですね。
 そしてこれを受けて、地域生活支援事業の実施要綱というのがあるのですが、このなかの市町村の必須事業について記載した別記2に、「コミュニケーション支援事業」という項目があります。この事業は、「障害者等とその他の者の意思疎通を仲介する手話通訳者等の派遣等を行い、意思疎通の円滑化を図ることを目的とする」とされています。そして、「手話通訳者等」ですから、ここに要約筆記者も含まれ、実際、その派遣される要約筆記者の例として「要約筆記奉仕員」が掲載されています。

 要約筆記に関するもう一つの制度は、別記6や別記10に書かれています。別記6、10の規定は同じ内容ですが、別記6は市町村事業、別記10は都道府県の事業です。で、そこに何が書かれているかというと、「要約筆記奉仕員の養成事業」が、それぞれ、市町村と都道府県の任意事業として掲げられています。


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TAKA
コミックから評論、小説まで、本の体裁をしていれば何でも読む。読むことは喜びだ。3年前に手にした「美術館三昧」(藤森照信)や「個人美術館への旅」を手がかりに、最近は美術館巡りという楽しみが増えた。 大学卒業後、友人に誘われるままに始めた「要約筆記」との付き合いも30年を超えた。聴覚障害者のために、人の話を聞いて書き伝える、あるいは日本映画などに、聞こえない人のための日本語字幕を作る。そんな活動に、マッキントッシュを活用してきた。この美しいパソコンも、初代から数えて現在8代目。iMacの次はMAC mini+LEDディスプレイになった。       下出隆史
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