2009年07月13日
全要研集会第1分科会から−12
研究討論集会のための提言論文が分析した社会啓発の内容は、次のようなものでした。聴覚障害者にとって暮らしやすい社会を実現するための啓発活動の目的は、
〈A〉聞こえない、聞こえにくいことに対する理解がある社会にする
〈B〉聞こえが保障された社会にする
〈C〉社会的援助が存在するだけでなく、容易に援助が得られる社会にする
というところにあります。要約筆記する人の養成だけでは、これらの領域をカバーできないことは明らかでしょう。
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提言論文では、この〈B〉については更に次の4つの観点が指摘されています。つまり、
〈B1〉誰もが気軽に筆談する社会
〈B2〉音声情報に字幕が付いている社会
〈B3〉補聴しやすい社会
〈B4〉的確に話を伝えてくれる通訳をいつでも依頼できる社会
です。要約筆記する人の養成は、このうちの〈B4〉にのみ拘わっており、これ以外にもたくさんのことをしなければ、聞こえが保障された社会を作り出すことはできません。要約筆記をする人、他人の話を聞いてこれを的確に通訳できる人の養成については、ますます専門性を問われており、もっときちんと伝えて欲しいという要望が強い訳ですから、そういう専門性を持った人の養成ばかりしている訳にはいかないのです。通訳としての要約筆記がきちんとできる人の養成に加えて、これとは別に、社会に対して、広く働きかけ、聞こえが保障された社会を作り出していく、という活動が求められているのではないでしょうか。