2007年08月27日

板谷波山展に

 今日は、暑い中、板谷波山展に行ってきた。場所は、知多市歴史博物館。板谷波山の作品は、東京の出光美術館にかなりあるらしく、そこから43点ほど、借り受けての展覧会。展示室一つのかわいらしい展示だ。
 板谷波山は、もともと彫刻家。最初の職は、石川県工業学校の彫刻科の主任教諭。そこが廃止されて、窯業科にかわったという経歴を持っている。そのせいか、轆轤は、最後まで自分では引かなかった。轆轤師が轆轤をひき、そうしてできた壺や皿に模様やデザインを掘り、描いた。
 デザインというか陶器の意匠は確かにすばらしい。そして展示されたスケッチの一部を見ると、そうしたデザインを支えるための写生や装飾模様の研究は相当のものがあったことがわかる。安易に教訓を引き出す必要はないのだが、確かにこうしたスケッチなどの蓄積なしに、高いレベルの作品は生まれ得ない。
 ところでこのスケッチ帳がいい。たとえばタマネギの写生が、タマネギ形状の花瓶にデザインされている課程が手に取るようにわかる。蕪もいい、スケッチブックと実際に作られた作品とが展示されているだけに、波山における写生からデザインへという運動を、そこから読み取ることができる。所々簡単なメモが入っている。「あじさいを写生中に脇腹を食いに来た大あぶ。実物大」と書かれたメモの横に、あぶのスケッチが添えられている。「実物大」とあるから、あぶはたたき落としたのだろうか。あじさいの彩色が途中までなのは、あぶに食われたのを治療したから? など波山の写生につきあっている気持ちになる。
 小さな町の小さな展示。思いがけず良い時間だった。


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この記事へのコメント
波山の大ファンです。
波山展とは羨ましい限りです。
出光美術館に行こうと思っています。
Posted by ポコマム at 2007年09月26日 00:02
 コメントありがとう。波山の作品も良かったのですが、スケッチ帳が本当に素敵でした。飛び魚の文様とか、どうやってこんな具象的なものから、文様にもっていくのか、その運動とでも呼びたくなる波山の造形力というか文様力というか、それが楽しかったですね。
 出光美術館に行かれたら、是非感想を聞かせてください。
Posted by ブログ主 at 2007年09月26日 01:40
 

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TAKA
コミックから評論、小説まで、本の体裁をしていれば何でも読む。読むことは喜びだ。3年前に手にした「美術館三昧」(藤森照信)や「個人美術館への旅」を手がかりに、最近は美術館巡りという楽しみが増えた。 大学卒業後、友人に誘われるままに始めた「要約筆記」との付き合いも30年を超えた。聴覚障害者のために、人の話を聞いて書き伝える、あるいは日本映画などに、聞こえない人のための日本語字幕を作る。そんな活動に、マッキントッシュを活用してきた。この美しいパソコンも、初代から数えて現在8代目。iMacの次はMAC mini+LEDディスプレイになった。       下出隆史
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